一人でも従業員がいれば、毎月の給与計算業務が発生します。
小規模の会社であれば余裕を持って給与計算ができるかもしれませんが、従業員が多いと業務負担が大きくなるため外部へ依頼したいと考える事業主は少なくありません。
ここでは、「給与計算の依頼は社会保険労務士をおすすめする理由」についてメリット・デメリットを踏まえてご紹介します。
給与計算の業務とは
社会保険労務士の独占業務には労働社会保険の法令に基づいた帳簿書類の作成を行う業務があります。
ここで勘違いしがちなのが、賃金台帳を作成するのは社会保険労務士の独占業務となりますが、賃金台帳の作成と給与計算の業務自体は異なるものです。
給与計算は、残業手当の計算や社会保険料、税額などを正確に算出して、1円の誤りもないように、期日厳守で、給与の支給総額と控除後の額を計算する業務なのです。
アウトソーシングできる給与業務
社会保険労務士や外部業者へ委託する場合に問わず、給与計算業務のアウトソーシングが可能な3つの主な給与業務についてご紹介します。
毎月の給与計算
給与計算に関しては、
- 残業代
- 欠勤控除
- 雇用保険料
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 所得税・住民税等
などといった細かな計算が必要です。
さらに、月給・日給・時給と雇用形態が分かれていれば、給与計算が煩雑になります。
毎月の全従業員の給与計算には、相当な時間と手間がかかるでしょう。
賞与計算
賞与計算に関しては、
- 雇用保険料
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 所得税
などといった細かな計算が求められます。
住民税更新
事業主は、特別徴収義務者として従業員から個人住民税を特別徴収する必要があります。
給与計算を社会保険労務士に委託するメリット
社会保険労務士が請け負う業務のひとつに「給与計算」があります。
給与計算のメリット
給与計算を社会保険労務士に委託すれば、毎月かかっていた時間と手間が削減でき、その分、他の業務へと力を入れられます。
その他、随時改定や定時決定といった給与計算に付随する社会保険関係の手続きも、社会保険労務士であれば漏れがなく正確に行うことが可能です。
さらに、「Web給与明細サービス」に対応した社会保険労務士事務所なら、電子化した給与明細の配布を自動化すれば、人件費や消耗品費の削減にもつながります。
賞与計算のメリット
社会保険加入者については、賞与支払届を作成して年金事務所へ提出が必要ですが、社会保険労務士に依頼すればそういった手続きも漏れもなく行えます。
住民税更新のメリット
年末調整後には、給与支払報告を提出した各自治体より「特別徴収税額決定通知書」が送られてきます。
社会保険労務士に委託することで、従業員それぞれに税額が異なり、毎月の給与から天引きの準備をするのは時間と手間のかかる業務も特別徴収税額決定通知書を提出するだけで済むため、情報漏洩の心配もなく安心して依頼できるでしょう。
こんな企業におすすめ
- 中小企業で、専門知識のない担当者が給与計算を行い。計算ミスがあり、正確かつ迅速に給与計算をしたい。
- 従業員が多く給与計算等の労務に関する人的・時間的コストが多く、本業に専念できない。
- 給与計算以外にも入退社・社会保険手続、従業員の妊娠・出産や病気・ケガに関する相談・依頼をしたい。
こうした給与計算等を依頼することによって、
担当者コストを削減できる
これまで給与計算業務での残業があった場合は、社会保険労務士への依頼で残業が削減できる点は企業にとって大きいメリットになります。
最新の法令に対応してくれる
社会保険制度や労働関係法令は、頻繁に改正が行われています。その点、社会保険労務士に依頼すると法改正に対応してもらえます。
複雑かつ煩雑な計算方法など社会保険労務士に依頼すれば、そういったリソースを省くことができます。
情報漏洩のリスク低減
給与計算を雇用している従業員が担当している場合、担当者から給与に関する情報が漏洩するおそれがあります。
その点、社会保険労務士に依頼すると情報漏洩リスクを低減でき、不要なトラブルも回避できます。
本業に専念できる
給与計算業務の委託により、従業員が本業に注力でき、企業の利益向上につながります。
また、複雑な給与計算やそれに係る業務の担当が変わった場合、引継ぎ作業がなくなります。
給与計算以外の業務も相談・依頼できる
社会保険労務士は給与計算だけではなく、その他に、就業規則の作成や助成金申請、労働トラブルの相談が行えます。
給与計算以外でも人事・労務管理の支援
給与計算以外でも、社労士は人事・労務管理についても専門家です。
社会保険労務士に人事・労務管理を依頼することで得られるメリットについても、ご紹介します。
社員の相談サポートができる
労働時間や有給休暇に関する対応や相談は人事や総務に任せている会社が多く、こういった場合、社会保険労務士がどのように対応すればよいかを明確に判断できます。
職場環境を整備することができる
給与計算以外に、労働環境に関する法改正も頻繁にあり、会社がどのような職場環境を整備すべきか、意見や提案といったアドバイスをしてくれます。
給与計算を社会保険労務士に委託するデメリット
ここまで給与計算について、社会保険労務士への委託することでメリットをお伝えしてきました。
給与計算業務の委託を適切に活用すれば、担当者コスト削減等の自社におけるメリットを最大化できるでしょう。
社会保険労務士に委託する場合には、メリットだけでなくデメリットを把握し、適切に業務を委託しましょう。
年末調整の法定調書の作成については税理士の独占業務
社会保険労務士が年末調整をおこない、源泉徴収票を作成してしまった場合は違法となる可能性があります。
自社のノウハウ蓄積ができない
給与計算を委託した場合には、自社の人材にノウハウが蓄積されにくくなり、給与・社会保険・税務等の知識を保有する人がいなくなってしまうことも考えられます。
業務負担が残る場合がある
アウトソーシングする業務範囲が不明確だと、社会保険労務士とのやり取りに手間がかかったり、利用しているシステムが連携できなかったりして、かえって作業負担が増すケースもあります。
自社のニーズに合わせて、委託する業務の範囲を決めておくことがおすすめです。
給与計算について相談できること
時間外労働
給与計算業務のひとつに、時間外手当の計算があります。
諸手当の中で毎月変動する時間外手当(残業手当)は、就業規則や法令を根拠としながら計算が必要です。
これは労働関係法令や通達、社内のルールを熟知している社会保険労務士だからできることです。
特に以下の変形労働時間制について導入している企業へは、所定内労働、法定内残業、法定外残業等の正確な計算が必要です。
- 1か月単位の変形労働時間制
- 1年単位の変形労働時間制
- フレックスタイム制
雇用保険料
給与計算においては、
- 雇用保険
- 健康保険(介護保険)
- 厚生年金保険
の3つを、従業員の給与から控除します。
雇用保険料は、他の2つとは計算方法が異なり、さらに雇用保険料は、支給総額に保険料率を乗じて控除額を算出しますので、保険料が毎月変動します。
また、保険料率は保険年度ごとに決まります(毎年4月1日から翌年3月31日まで)ので、率が変わることもあります。
社会保険料
給与計算においては、
- 健康保険(介護保険)
- 厚生年金保険
この2つについては、保険料は原則固定で固定給に変動がなければ、毎月変わることはありません。
毎年7月に、会社が算定基礎届を行い、各従業員に9月以降の等級及び保険料が決定します。この保険料が給与から控除されます。
また、保険料率は年度ごとに決まります(3月分の保険料から変更)ので、率が変わることもあります。
ここで注意すべきことは、厚生年金保険料は、都道府県ごとの違いはありませんが、健康保険料は、協会けんぽの場合、都道府県によって異なることです。
合わせて、40歳以上65歳未満の従業員の場合は、介護保険第2号被保険者となるため、健康保険料に上乗せして介護保険料も控除しなくてはなりません。
所得税
給与計算の際には、所得税も控除しなくてはなりません。
その月の給与から、通勤手当などの非課税手当や社会保険料等の金額を控除し、社会保険料等控除後の額を求め、源泉徴収税額表に当てはめて所得税額を算出します。
個々の従業員の被扶養者の年齢や人数によっても、控除すべき額が変わってきます。
このように、給与計算は複雑です。
特に残業に関する計算に漏れやミスがあると監督署からの指導や訴訟などといったトラブルになるケースが多くあります。
給与計算は社会保険労務士の独占業務ではないものの、給与計算には社会保険労務士が精通する様々な法律が関わっています。専門知識を有している社会保険労務士に依頼すれば安心感を得られます。
給与計算と報酬
社会保険労務士に給与計算を依頼する場合、報酬について以下の特徴があります。
- 社会保険労務士に報酬基準は定められていない
- 従業員数に応じて変動するのが一般的
- 給与計算以外で就業規則の作成や届出、従業員の入退社手続き、社会保険料変更手続きなどを依頼範囲に含めると、その分の費用が加算
- 契約の継続もしくは依頼内容の組合せにより安価で請け負ってくれる
- 給与計算業務のみを依頼する場合と、その他の業務も含めて依頼する場合とでは、料金の相場が変わる
社会保険労務士が給与計算を請け負うと、顧問先企業との結びつきが深まるため、給与計算業務を請け負うことには、プラスアルファの意味もあります。
社員数 | 報酬相場 |
~4人 | 20,000~25,000円 |
~10人 | 25,000~35,000円 |
~20人 | 35,000~45,000円 |
~30人 | 45,000~55,000円 |
~40人 | 60,000円~ |
ここで紹介したのはあくまでも一般的な相場であり、料金に見合ったサービスかどうかを検討することが必要です。
また、給与計算だけでなく、就業規則の作成や社会保険料の変更手続き等を含めて依頼するとなると、その費用も加わりますので、サービス内容を含めて検討することをおすすめします。
まとめ
ここまで、給与計算の依頼は社会保険労務士をおすすめする理由について、メリット・デメリットを踏まえて紹介いたしました。デメリットもしっかり把握していれば、企業の助けとなります。
大きなメリットについてまとめます。
- 社会保険労務士に給与計算の依頼することで、複雑な給与計算のミスやそれに費やす人的・時間的コストの削減ができる。
→結果、本業に専念できる。
- 人事・労務管理における職場環境等の相談や意見の提案もしてくれる。
→結果、人事管理におけるトラブルが防止できる。
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